指先寓話 介護士養成校

指先寓話

皆さん、こんにちは介護士養成校ひまわり学園へようこそ。
当校では厚生労働省基準に則って介護士の育成を行っています。
また、最新のVR技術を使うことにより、最短での介護士資格の取得を認められた特別校であります。
学歴や主義思想に関係なく誰でも簡単に介護士になれますので、学生の皆様は安心して勉学に励んでくれればと思います。

まずは、四肢拘縮のある寝たきりの方のVR体験です。
当学園の使用するVR機器は視覚だけでなく、触覚や嗅覚、味覚などあらゆる五感を感じることが特徴です。
では、さっそく体験してみましょう。

VR機器を取り付けられる。
すっと意識が遠のいた後、目が覚めると見たことがない天井だ。
四肢だけでなく、指先まで思うように動かない。
トイレに行きたくてたまらない。
何とか声を出したいが「あ~、あ~」しか声が出せない。
我慢できず思わず尿を漏らしてしまう。
生温かい感触が陰部周辺に広がった後に少しべっちゃりした感触が続いている。
ここで耳元から声が聞こえる。
「現在、感じているのがオムツ内での尿失禁の感覚です。続いて、便失禁を感じていただきましょう」
急に便意をもよおしてくる。
さすがに便は失禁したくない。
何とか必死に耐えようとするがどうにもならない。
我慢しきれずに便を漏らしてしまう。
最悪だ。
便の臭いと、べったりとした気持ち悪い皮膚感覚が続く。
その内に便があたっているところが痒くなってくる。
痒い場所を搔きたくても身体が全く動こうとしない
必死に身体を動かしながら声をだすが「あ~、あ~」という声にしかならない。
生温かった便が徐々に冷たくなっていくのを感じる。

ここで目が覚めた。
「以上が、寝たきりの人のVR体験です。寝たきりの人の大変さがよくわかったと思います。続いて認知症患者体験VRに移行しようと思います」
そう言われるとまたVR機器が取り付けられる。

すっと意識が遠のくと、見慣れた家の風景が映る。
なんだ、自分の家じゃないか。
そう思い歩き始めるが歩けども歩けども、何処にも行き着かない。
まるで家が迷路になっているようだ。
『○○さん、食事の時間ですよ』聞きなれたような声が聞こえる。
手を引かれてやってきた場所には見たことのない顔の高齢者がずらりと並んでいる。
空腹感が今までに感じたことがないほどに強い。
知らない高齢者の中に連れていかれる
妙に子供っぽい前掛けをつけられる。
食事を食べたいが、手が思うように動かない。
食事は全て既に刻んである、スプーンで何とか食事を口へ運ぶが味が薄く、全く美味しくない。
それでも空腹感に耐えられず、何とか必死に口へ運ぶ。
ぼろぼろと食べ物がこぼれていくので、床に落ちたものを拾おうとすると見知らぬ青年がやってきて。
『○○さん、あぶないですよ』と引きつった笑顔を見せる。

さぁ、続いては移乗介護の体験を行いましょう。
次は、高齢者特性の心理学、生理学についてです。
その次はバイステックなどの支援技術。

その次は…。
その次は…。

シューっという音とともに意識が戻ってきた。
機械が外れていく。
耳元から音声が聞こえてくる。
「介護士はこのようなたくさんの耐えがたい訓練を受けて必死に介護サービスを提供しています。いかがでしたか介護士養成校の訓練体験VRは。今後は介護士に対して暴力やセクハラ行為を行わないよう願います」
そうだった、俺は家に来たヘルパーへ大声をあげたことが原因で危険要介護者として、この介護士養成校体験VRに無理やり参加させられたんだ。
『このVRで体験したことは真実なのか!』俺はそう大声を上げると
音声が一言聞こえてきた。
「もう、この世界に真実なんか消えて数十年が経ちますことをご認識を」と。

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