~介護士俳句劇場~プロローグ1

介護士俳句劇場~渡る世間は季語ばかり~

この物語は1人の俳句好きが一人前の介護士になるまでの物語である。

俺の名は鈴木太郎、42歳。
魚の加工場で働いている。いや、正確には働いていただ。

「おい、太郎、部長がお呼びだよ」
俺はいつものように、鮭フレークを作るための作業に取り掛かろうとするところで工場長にそう言われた。
ほんと、いつ見ても工場長は黄ばんだ汚い歯と、汚い笑顔だなと心で呟いた。
呼ばれる時点でだいたい、察しはついていたが急いで作業服を脱いで、部長室へと向かった。

魚の加工工場と言っても小さな工場だ、その割に役員室は無駄に立派な扉をしている。
そこをノックして入室した。

「いやいやいや、太郎君、忙しいところすまない」
やけに、一般の加工作業員の自分に向かって丁寧だなと思った。
「君も作業をしていてわかるだろ、年々、鮭を確保するのが難しくなっていることを」
確かに、自分が勤め始めた頃には大量の鮭を加工していたが年々、鮭の値段が高騰し、鮭フレーク加工工場に入ってくる鮭も少なくなってきている。

「そこにだ、ロシアのウクライナ侵攻があったのを君も知っているだろ。それでさらに鮭の確保が難しくなっているんだよ、それでだ、申し訳ないが君は独り身じゃないか、正社員から時給労働に変わって欲しいんだよ」
つまりは、辞めろということか。
年々、経営が難しくなっているので肩叩きにあったというわけだ。

新しい雇用契約書がテーブルの上に置いてあった。
そこには当然のように最低時給が書いてあった。
一度考えさせてくださいと告げると、俺は雇用契約書を手にすぐに役員室を出た。

転職だな。
心でそう呟いた。鮭の加工場なら絶対に安定していると思って就職した会社。そう、欲しかったのはただの安定だ。
どんどん、じり貧になっているのは一般作業員の自分でもわかっていた。
パートさんもどんどん首切りされているのも知っている。

ハローワーク行かないとなぁ…。

ここで一句
職安の道をググって白き風

to be continued…。

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